大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

岡山家庭裁判所 昭和40年(家)671号 審判 1965年11月18日

申立人 波山富子(仮名)

未成年者 坂井一郎(仮名)

主文

未成年者坂井一郎の親権者を、本籍都窪郡○○町大字○○○○一、八〇八番地亡坂井忠男から、申立人波山富子に変更する。

理由

申立人は申立の趣旨として未成年者の親権者を申立人に変更するとの審判を求め、その理由として、申立人が夫坂井忠男と昭和三八年九月一四日離婚するに当つて、長男一郎の親権者を父忠男と定め、一応父の手許で養育していたのであるが、その後申立人は昭和三九年五月一日再び忠男の許に復縁し、未成年者と共に夫婦、親子の生活をし、病弱の夫の看病、姑の世話はもとより、未成年者の監護教育に当つてきたのであるところ、夫忠男は昭和四〇年九月二四日申立人、未成年者等を残して病没した。その間、再度婚姻届出をする手筈であつたが届出前に夫が死亡したものである。しかし未成年者に対しては、その前後を通じ、親権者と全く同様の監護を続けて現在に至つており、将来も親権者として十分に養育していきたいと考えるので、親権者を申立人に変更されたいというのである。

戸籍謄本、申立人審問の結果によると、申立人が離婚に当り、未成年者の親権者を夫忠男と定めることに合意したこと、その後復縁して夫婦、親子関係を続けて夫の死後も引続き未成年者の母親として親権者と何等変ることなく、監護教育を続けて現在に至つていることが明らかであるところ、親権者である父または母が死亡したときは、直ちに後見が開始し、後見人を選任すべきであるとするのが通説であるが、本件の場合は申立人が復縁して、未成年者とも起居を共にしその監護に専念しており、かつ親権者としても適当であつて、未成年者の利益にも合致すると考えられるので、申立人の申立を相当と認めて、主文のとおり審判をする。

(家事審判官 三野盛一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例